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自閉症と脳の発達

2023年01月26日

発達障害は近年その社会的認知度が高まってきており、現在放映中のテレビドラマでもテーマとなるなど一般における関心も増してきている。

この障害は、令和2年の日本学術会議臨床医学委員会出生・発達分科会における提言でも10人に1人の健康問題であると提起されている通り、疫学的にみても決して稀なものではない。

さらに発達障害は当人の社会での生きづらさから鬱病の背景となっているケースも少なくなく、また少年少女の非行や社会犯罪との関連性も指摘されていることなどを考慮すると、その課題は当事者個人からさらにに社会にも広く波及しうるものであると考えられる。

発達障害の原因についてはまだ不明な点が多く、またその診断も現在では一般的には問診や行動観察(必要に応じて心理検査や発達検査)が中心であるが、様々な早期診断の方法が模索されている最中である。そんな中、近年自閉症児の脳において早期にも認められる所見が指摘されてきている。

自閉症と診断される乳児の脳では、その容量が出生時には正常だが、2-3歳までに増大していることが認められ(Courchesne et al. 2001, Sparks et al. 2002, Shen et al.2003, Hazlett et al. 2011, Nordahl et al. 2011)、またその増大率は自閉症重症度とも関連している(Hazlett et al. 2017)ことが明らかとなりつつある。そしてこの容量の増大は皮質表面積の増大によるもので、厚みの増大によるものではないようである(Hazlett & Gering et al. 2011)。

さらに、くも膜下腔内における脳脊髄液量(CSF)の増大も認められている(Shen et al. 2013, Shen et al. 2017)。例えばある研究では、後に自閉症と診断された乳児は6か月目においてコントロールグループに比して18%のCSF増大が認められ、重度自閉症と診断された乳児にあっては25%の増大が認められた(Shen et al. 2017)。

この6か月目における過剰なCSF量は、アルゴリズム計算上では24か月目における自閉症診断に対し感度66%特異度68%という結果であり(Shen et al. 2017)、まだ診断のツールとしては信頼度は低いが今後の可能性を秘めているであろう。

ShenとPiven(2017)は、CSFは脳にとっての老廃物を排泄する一方、成長因子など脳の発達に必要な物質を運搬するなど脳機能にとり重要な役割を果たしており、その鬱滞が脳機能に影響する可能性を指摘している。

さらにまた、diffusion tensor imaging (DTI) tractographyを用いた研究では、脳梁や小脳脚など白質構造にも異常が認められるようである(Sparks 2002, Wolf et al. 2012 & 2015)。

以上のような研究結果は、オステオパシーの臨床において自閉症と診断された(またはその疑いのある)子供の脳を診ている著者にとっては納得のいくものである。

CSFの鬱滞は、例えばアクアポリンなど液体の輸送に関わる受容体の遺伝的異常などが関係している可能性もあるが、著者の臨床上の観察では髄膜や尾骨-終糸なども関係した中枢神経に対する構造的ストレスならびにそれらと関連した中枢神経のmotilityの減弱が多くの場合関連しているように見受けられる。そして上記メカニズムが脳のどの部分に主に影響を及ぼすかにより顕在化する症状は異なり、例えば小脳が侵された場合には運動失調、言語野の場合は言語障害、前頭葉では注意欠如、島では(人と目を合わせないなどのの)コミュニケーション障害などが生ずると考えられる。また同様のメカニズムは視神経経路に影響を及ぼし、視覚障害を生ずる例も少なくないように見受けられる。これは自閉症とは別に眼の痛みや疲れやすさなどとして自覚されることがあるように思えるが、視覚障害と自閉症との関連性を指摘する研究者もいる(Wrzesińska et al. 2017) 。

今後、ここで紹介した脳容量ならびにCSF量の増大も含めた自閉症スペクトラム(ならびに発達障害)の病態生理の解明が進み、またその解決法が模索される中でオステオパシーの果たせる役割も検討されることを期待したい。

青山・葉山オステオパシープラクティス

院長 江熊省吾 Bsc.(Hons.)Ost.Med. D.O.(UK), MRO(J)

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参照文献

Courchesne E., Karns CM., Davis HR., et al. (2001). Unusual brain growth patterns in early life in patients with autistic disorder: an MRI study. Neurology. 2001;57(2):245–254. 

Hazlett HC., Poe M., Gerig G., et al. (2005)Magnetic resonance imaging and head circumference study of brain size in autism: birth through age 2 years. Arch Gen Psychiatry. 2005;62(12):1366–1376. 

 Hazlett HC., Gu H., Munsell BC., et al. (2017). Early brain development in infants at high risk for autism spectrum disorder. Nature. 2017;542(7641):348–351. 

 Hazlett HC., Poe MD., Gerig G., et al. (2011)Early brain overgrowth in autism associated with an increase in cortical surface area before age 2 years. Arch Gen Psychiatry. 2011;68(5):467.

Nordahl CW., Lange N., Li DD., et al. (2011). Brain enlargement is associated with regression in preschool-age boys with autism spectrum disorders. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(50):20195–20200. 

Shen MD., Nordahl CW., Young GS., et al. (2013). Early brain enlargement and elevated extra-axial fluid in infants who develop autism spectrum disorder. Brain. 2013;136(pt 9):2825–2835.

Shen MD., Kim SH., McKinstry RC., et al.(2017) Increased extra-axial cerebrospinal fluid in high-risk infants who later develop autism. Biol Psychiatry. 2017;82(3):186–193.

Sparks BF., Friedman SD., Shaw DW., et al. Brain structural abnormalities in young children with autism spectrum disorder. Neurology. 2002;59(2):184.

Wolff JJ., Gu H., Gerig G., et al.(2012). Differences in white matter fiber tract development present from 6 to 24 months in infants with autism. Am J Psychiatry. 2012;169(6):589–600. 

Wolff JJ., Gerig G., Lewis JD., et al. (2015). Altered corpus callosum morphology associated with autism over the first 2 years of life. Brain. 2015;138(pt 7):2046–2058. 

WrzesińskaM., Kapias J., Nowakowska-Domagała K., Kocur J. Visual impairment and traits of autism in children. Psychiatr Pol 2017;51(2):349–358. DOI: https://doi.org/10.12740/PP/OnlineFirst/61352