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内受容感覚 Interception

2023年08月30日

一般的に「感覚」というと、視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚などを思い浮かべられると思います。これらはよく五感と呼ばれますが、医学的には「外受容感覚」と分類されることもあり、全て生体がその外部環境を知覚・認知する為の機能です。

一方、生体が自分の体の中で起こっていることを知覚・認知する機能は「内受容感覚」と呼ばれます。例えば、空腹感や尿意、痛み、筋肉の緊張などがこれに該当し、加えて感情もこの内受容感覚に含む場合もあります。

これまで医学は主に外受容感覚に焦点を当てて研究してきましたが、近年この内受容感覚の重要性が着目されつつあります。

この内受容感覚の機能障害が関連しているとされる疾患やコンディションには以下のようなものが含まれます(Chen et al. 2021)。

・慢性痛

・慢性痛

・アルコール・薬物依存

・不安障害

・鬱病などの情動障害

・PTSD

・強迫神経症

・自閉症スペクトラム

・摂食障害

・体性症状障害

・脳梗塞と神経変性疾患

・様々な精神・メンタル疾患の共存症

・過敏性腸症候群

・肥満

・Etc.

また内受容感覚は私たちの感情にも大きく関係していることが分かってきています。私たちの感情経験には、内受容感覚のシグナルならびに自身の内部・外部環境の認知評価が貢献していると考えられています(Schachter and Singer, 1962; Critchley and Nagai, 2012; Garfinkel and Critchley, 2013; Gendron and Barrett, 2009; Seth, 2013)。実際、内受容感覚の感受性は感情の安定性(Schandry 1981)や感情制御(Füstös et al. 2013)、感情強度 (Füstös et al. 2013, Herbert et al. 2010, Pollatos et al. 2007a,b, Wiens et al. 2000)などと相関することが示されています。

さらにこの感覚は意思決定などの高度認知機能にも関係していることが示唆されています。他、高齢者においては、特に夏になると注意が必要な熱中症も口渇や体温などの内受容感覚の機能低下が根底にあると考えられており(Murphy et al. 2017)、また心理学的には、この内受容感覚は「自己」感覚の形成に重要であると考えられています(Murphy et al. 2017)。

さらにこの内受容感覚は個体の健康というパースペクティブを超えて、社会性とも関係しているとの指摘がなされています。いくつかの研究(Kudieka et al. 2007, Werner et al. 2013, Pallatos et al. 2015)において、内受容感覚の感受性の高い人々の方が、困難な社会的状況に対して感受性の低い人々と同等の身体的反応を示したにも関わらず、ネガティブな情動をより少なく報告しました。これは感受性の高い人はそれだけ感情の制御がうまくできる為であると考えられています。そして、内受容感覚と社会性との関係性を示すエビデンスとして、社会的排除は急激な急激な内受容感覚の低下をもたらすということが分かっています(Durlik & Tsakiris 2015)。

この内受容感覚と社会性の関係性は、

1)増強された感情認識仮説―体の反応をより感じる能力は感情経験の豊かさにつながり、豊かな感情経験により他者の感情をより理解することができるようになる(共感)。このような共感理解や感情の共有は社会的つながりを促進する。

2)注意スイッチ仮説―もし注意が外部イベントに向けられると、内部状態をモニターする為の注意リソースを減らすことになる。

などにより説明されています。

近年、身体的衰退ならびに死亡リスクとも相関する(Luo et al. 2012)社会的孤立は社会問題ともなっていますが、それにこの内受容感覚の低下が関係している可能性もあります。

今私たちは国際政治、自然環境、経済環境などにおいて厳しい現実に直面しており、またすさまじいスピードで進化するテクノロジーに伴い社会環境は目まぐるしく変化しています。さらにスマートフォンの普及は私たちが内受容感覚に意識を向けるプライベート時間をどんどん浸食しています。

このように現代においては、一般的には私たちの意識は外受容感覚や思考に向けられ、内受容感覚へ向けられるリソースは少なくなる傾向にあるように見受けられます。

この内受容感覚はトレーニング(ex. 心拍カウンティング:自身の心臓の拍動を手首の脈ではなく、体の内部で感じる。)により発達させることができ、これにより身体的症状ならびに不安の度合いを低下させることが示されています(Sugawara et al. 2020)。また、瞑想トレーニングも、内受容感覚を増強させるようです(Lima-Araujo GLd et al. 2022)。

たまに外受容感覚や思考から意識を内受容感覚に向け、自分の体の声や今自分がどんな感情をもっているのか聴いてあげる時間を作ることはご自身の健康や認知機能、社会性にとって有益となるはずです。

オステオパシーマニピュレーションには様々な手法がありますが、患者様のお体に内在する生理メカニズムに同調するかたちで施されることが多い為、指圧やマッサージ、強い矯正などとは異なり、強く外受容感覚を刺激するものではなく、どちらかというとこの内受容感覚に訴えかける手法と言えるかもしれません。

患者様ご自身でこの内受容感覚を発達させていただくことで、オステオパシーの効果をより実感していただけるようになるでしょう。

オステオパシーは不快な内受容感覚を低減させるお手伝いができます。また特に当院では、この内受容感覚における重要な中枢である脳の島皮質や前帯状皮質などの状態を整えることもできますので是非一度ご相談ください。

青山オステオパシープラクティス 

院長 江熊省吾 

オステオパシー医学理学士号

ディプロマ・イン・オステオパシー

ナチュロパシー・ディプロマ

MRO(J)

URL: aop-osteopathy.com

Email: info@aop-osteopathy.com

参照文献

Chen WG,Schloesser D,Arensdorf AM,Simmons JM,Cui C,Valentino R,Gnadt JW,Nielsen L, Hillaire-Clarke CS,Spruance V,Horowitz TS,Vallejo YF,Langevin HM. (2021).The Emerging Science of Interoception: Sensing, Integrating, Interpreting, and Regulating Signals within the Self. Trends Neurosci. 2021 January ; 44(1): 3–16. doi:10.1016/j.tins.2020.10.007. 

Füstös, J., Gramann, K., Herbert, B.M., Pollatos, O., 2013. On the embodiment of emotion regulation: interoceptive awareness facilitates reappraisal. Soc. Cogn. Affect. Neurosci. 8 (8), 911–917. 

Herbert, B.M., Pollatos, O., Flor, H., Enck, P., Schandry, R., 2010. Cardiac awareness and autonomic cardiac reactivity during emotional picture viewing and mental stress. Psychophysiology 47 (2), 342–354. 

Lima-Araujo GLd, de Sousa Ju ́nior GM, Mendes T, Demarzo M, Farb N, Barros de Araujo D, et al. (2022) The impact of a brief mindfulness training on interoception: A randomized controlled trial. PLoS ONE 17(9): e0273864. https://doi.org/ 10.1371/journal.pone.0273864 

Luo, Y., Hawkley, L. C., Waite, L. J., and Cacioppo, J. T. (2012). Loneliness, health, and mortality in old age: a national longitudinal study. Soc. Sci. Med. 74, 907–914. doi: 10.1016/j.socscimed.2011. 11.028 

Murphy J, Brewer R, Catmur C, Bird G. (2016). Interoception and psychopathology: a developmental neuroscience perspective. Developmental cognitive neuroscience 23(2017)45-56.

Pollatos, O., Herbert, B.M., Matthias, E., Schandry, R., 2007a. Heart rate response after emotional picture presentation is modulated by interoceptive awareness. Int. J. Psychophysiol. 63 (1), 117–124. 

Pollatos, O., Traut-Mattausch, E., Schroeder, H., Schandry, R., 2007b. Interoceptive awareness mediates the relationship between anxiety and the intensity of unpleasant feelings. J. Anxiety Disord. 21 (7), 931–943. 

Schandry, R., Sparrer, B., Weitkunat, R., 1986. From the heart to the brain: a study of heartbeat contingent scalp potentials. Int. J. Neurosci. 30 (4), 261–275. 

Sugawara A. Terasawa Y. Katsunuma R. Sekiguchi A. 2020. Effects of interoceptive training on decision making, anxiety, and somatic symptoms. BioPsychoSocial Medicine, 14, article number 7.

Wiens, S., Mezzacappa, E.S., Katkin, E.S., 2000. Heartbeat detection and the experience of emotions. Cogn. Emot. 14 (3), 417–427.